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北朝鮮の真実

よく、夕方のニュースで北朝鮮のテレビ放送に面白おかしい解説や識者のコメントをつけたコーナーがある。おそらく、これは以前に国賊サリン教に世間の注目が集まったときに、教団の特異な側面をテレビ局の各局が視聴率獲得と視聴者の野次馬根性に迎合する形で競って放映し、教団の側もそれに便乗した信者獲得と収入増を狙って教団直営の食堂やグッズ販売店で悪乗りしたようなものを次々と売り出したり、若い女性に人気の幹部を利用して入信させたりしていた、あの熱狂と同じ次元のものなのだと思う。法的には必要ないはずだが、テレビ映像を引用した分だけ、テレビ局が北朝鮮側に放映料を支払っているという。決して相手を批判するわけでなく、むしろ相互利用しあっている感がするのは、あの頃と変わらない。

北朝鮮の映像といえば、この他に、北朝鮮の内部に潜入して盗撮してきたビデオ映像を独占入手したとかいって放映しているものがある。盗撮だからこそ分かる、地上の楽園には程遠い、疲弊しきった国内の様子や強制収容所と見られる地域の人々の姿は、脱北者による暴露本で散々書きつくされた感があるとはいえ、「独占入手」の言葉に値するインパクトを視聴者に与えている。

さて、題名に「北朝鮮の真実」などと書いてしまったが、以下はあくまで私の勝手な想像である。しかし、心に思い描いたことは時に、現実として結実することがあるということも忘れてはならない。

あの映像は誰が撮ったのだろうか。仮に、海外から入国した外国人なのであれば首都の市街地を歩くだけで目立った存在になる。現地の人間ですら国内を自由に移動することが出来ないほど厳しい監視体制の国である。ましてや、地方都市や農村ではもっと目立つのではないだろうか。そもそも、外国人の入国自体が少ない国なのだから、公安警察のような機関が一人一人に張り付いて、一切の行動を監視することも可能である。仮に在日朝鮮人あたりが帰省を目的として入国したと説明したとしても、同じような監視がつく可能性は否定できない。そもそも、日本人含め他の国の人よりは現地人に溶け込みやすかろうが、日常的な栄養状態の格差からくる外見の明らかな違いはどのような服を着ても誤魔化せないのではなかろうか。さらに、入国の段階で厳しい荷物検査があるわけで、カメラを持ち込んだ外国人は秘密主義の国では殊更警戒されるのではないだろうか。「極秘取材」などと銘打っても取材源の隠匿は北朝鮮側からすれば不可能なのではないだろうか。

それでは、密入国ルートとして名高い中朝国境を介して現地人が撮ったものを入手したのだろうか。北朝鮮に潜入して盗撮した映像を見る限り、画像はデジタルの鮮明さがあり、粗くないので、先進国から持ち込まれた最近のデジタルビデオを使ったようである。以前、北朝鮮の浮浪児の様子を極秘に撮影したRENK(スペルが間違っていたら御免なさい)のビデオと、撮影の経緯を書いた本が有名になったが、ここ数年は不安定な情勢による難民の流入や難民受け入れによる中朝関係の悪化を恐れて、中国側の国境の警備も相当厳しくなっているのが現状である。中国側から機材を持ち込んだと説明しても、やはり、中国側の国境の集落に外部からやってきた人が近づいた段階で中国当局が動向を監視し、機材の持ち込みに伴う出入国は難しいのではないだろうか。

じゃあ、誰があの映像を撮ったのだということになるが、私の推測では、あの盗撮ビデオの撮影者は北朝鮮の当局者であると考える。色々反論を受けるであろうことは十分承知した仮説である。しかし、よくよく考えてみてほしい。北朝鮮は自国を「地上の楽園」と称し、連日テレビで体制を賛美しているが、実際のところ、経済援助、食糧支援の顛末を見てきた世界中の人々は北朝鮮は「地上の楽園」ではないし、国が疲弊している原因は賛美されている体制にあることを十分理解している。そして、そのような世論を世界中から情報を収集している北朝鮮の上層部は十分察知している。したがって、北朝鮮の疲弊しきった現状を国家の上層部が認めたくないのは、国際社会に対してではなく、体制を倒しかねない国民に対してだけでよい。しかし、公的にその様なことを明確に国が認めるのは体裁が悪いし、即刻民衆蜂起をおこしかねない。そこで、映画監督あたりに海外のその種の潜入取材の映像を研究させて、いかにも隠し撮りされたかのような演出のビデオを制作して、特に対朝感情の悪化しつつある日本のマスコミ辺りに第三者を介してささやきかけて、放映させているのではないだろうか。あるいは、マスコミが既に北朝鮮と底通しているのかもしれない。

そのような経緯を経てビデオが放映されると、独占取材とか勿体をつけるほど視聴者は群がり、集中して見てくれる。そこに映されている疲弊した北朝鮮の現状を見て、人々はどう思うだろうか。そのような国に制裁や戦争を仕掛けたら、この人達は一層困窮することになるのだなと間違いなく思ってくれるだろう。そして、寒帯気候で農業が難しい上に冬に燃料が無い国で、あの人達はどうやって冬を越していくのだろう、と抑圧されている人達の身の上を案じることだろう。そのうえで、金王朝体制は問題が色々あるけれども、人道的見地からみても、平和尊重の見地からみても、北朝鮮に制裁や戦争を加えるのは酷なことだ、むしろ食料や物資をどんどん支援して、国を安定させるべきだ、という世論を優勢に引き上げることが出来るのである。実際、近いうちに民衆に大きな犠牲は生じそうなのだが、そのような形で国の困窮をリークすることによって、或る意味北朝鮮の体制が悪者役でも、逆に、支援を得たり、体制を維持することができるので、十分見合う利益があるのだ。北朝鮮の困窮している様子がテレビで暴露されると、監視体制が脆弱になるほど国全体の力が弱くなっているのか、と一見捉えがちだが、ただでさえ抑圧的で不満分子を抱えがちな体制が、不満の大きくなる時節に抑圧の手を緩めるとは到底思えない。昔イラクフセインが女子供で人垣を作って、その後ろから砲撃をして反撃されないようにする人間の楯と呼ばれる卑劣な戦法をとって一時期話題になったが、北朝鮮がメディアを用いたイメージ戦略によって同様の効果を期待していると考えられるのである。

最近の北朝鮮周辺は雲行きが怪しい情勢だが、あの国が望んでいることは相変わらず、爆発寸前の民衆をおさえつつ、支援を掠め取って体制を維持することであることは揺るがない。北朝鮮は「核実験」らしき爆発実験をしてはいるが、今後も外部に損害を及ぼす形での暴発をすることはない。自国に有利になるような条件を提示しつつ、国内で物騒なことを続けることだろう。上記のような考察を経ると、その様な国の主張と要求は、一般に放映されるプロパガンダ的な放送よりも、先進国の大衆の興味をひきつける形で登場する話題に隠されていると言ってよいだろう。

(C)2006

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