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飛行機は初代塗装の日航DC-8が好きです。ちなみに飛行機の話題はゼロです。

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徒弟制度

かつては寿司職人になるには弟子入りをして、下っ端の工程を少しずつやらされてステップアップし、次第に触ることが許される食材が増えていき、最終的に一人前の職人として寿司を握ることが許されて独立に至るというルートが一般的だった。現在では調理師学校があり、そのカリキュラムを数か月履修した卒業生が早速寿司屋を開店し、高評価を得たことで徒弟制度は無駄だという主張が出てきている。

ただ、考えられることは件の寿司屋というのは調理師学校が宣伝のために作った、「できる層」だけ集めて作った店だと思うのだ。現実には、調理師学校はじめ高卒者対象にしている専修学校は乱立状態であり、毎年のように医療スタッフやビジネスの会計や簿記資格や料理人や美容師やらを養成しているという実績があるだろうし、それらの卒業生の中には社会的に活躍している者もいるだろうに、そちらの方は脚光を浴びないのはやはり件の寿司屋が学校の宣伝目的に作られた店だからなのだろう。

現実には、日本の大学進学率は7割近く、専修学校にあえて行く層は何かしら社会に適合できない事情があるのだろうし、それでおいて学校が乱立している状態では、卒業生のほとんどは使い物にならないか、それこそ宣伝目的の店に立たせるにはまだ未熟な者を輩出するのが実情だろう。それは、寿司職人に徒弟制は不要と主張している人達が絶賛している調理師学校にも同じことが言え、その学校にも店には出てこない「出来ない層」がいると思うのだ。

数年前には、美容師の左翼団体が待遇改善を訴えるデモをしていた。派遣村とか言われていた頃だ。美容師が専門学校を卒業して美容師になっても、大きな店の見習い扱いで給与が低いと言う主張だ。昔なら住み込みで見習いでよかったかもしれないが、今はきちんと専門学校を出ているので何でも知っているのに昔ながらの扱いなのはおかしいのだという。これなども、普通に考えればわかる話だが、学校を出て万能ならば即時開業すればよい話である。そうすれば取り分は全部自分のものになる。万能だと自称せずに、根拠となるものを示して融資でも受ければよい話だ。だが、それはしない。その程度の腕だし、店舗経営の責任を持つほどではないと分かっているからだ。そうでなくても、美容師の専門学校で毎年何千人も卒業者が出ていて、それが美容師業界に参入して、美容院が乱立状態の中で開業しても、数年で過当競争に負けてほとんどは廃業するだろう。

また、医療職も次々専門学校が設立されている。昨年校舎を大幅に削減した代々木ゼミナールだが、閉鎖した校舎の売却先の一つには医療系の専門学校があるという。既に似たような学校があるのに新規設立する理由は離職率が高いからだ。資格がとれる、手に職、医療が重要な時代、そう煽って沢山入学者を受け入れても、実際に業務で生き残れるのは少数なのである。

別に専門学校の教育を否定するわけではない。だが、その学校は多分同年代の高卒者が東大とか国立大医学部とかを受験するよりも、はるかに簡単に入れるし、そして入学できる人数も多いと思うのだ。だから、それ以外のルートから調理師なり美容師なりの業種に入るものも含めると、新規参入者は多い世界だ。誰でもなれるのだから、競争相手は多い。一方で、有名店を挙げてと言われると出てくる店名は数えるほどだろう。要するに、参入は簡単だが、大成や生き残りは難しい世界なのだ。

生き残りにくいことにはメリットがある。参入者が増えて乱立すると、粗製乱造によってその業種全体の質は低下する。そうすると、全般的に低いスキルであると社会的に見られたり、それによって客が払う対価も低下する。もちろん、乱立する分は同業者間の潰しあいになる。これを技能習得に時間のかかる徒弟制にすることで、途中で一定の脱落者を発生させる。そうすると、業務をまわすうえで必要な全技術は持たせることなく淘汰できるので、低いスキルでも業務の全貌を知っているばかりに質の低い形で業界に残留するという手法が使えなくなる。

高卒労働者は就労後の離職率が高いと言われている。その理由の一端はこんなところにもある。

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